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「いちばんあいされてるのはぼく」の感想【ティラノサウルスシリーズ】

「いちばんあいされてるのはぼく」の感想【ティラノサウルスシリーズ】

この絵本を初めて子どもに読み聞かせたとき、一緒に聞いていた妻が泣きました。
「大人でも泣いちゃうの?」と娘。
大人だからこそ泣けちゃうお話なんです。

この作品のテーマは「独占欲と平等の愛」

  • 親から一番に愛されたい子ども
  • 子を思う親の愛情

親子2代にわたって心が震えるお話「いちばんあいされてるのはぼく」

  • きょうだいがいるお子さん
  • きょうだいの両親

に、特にオススメの作品です。

幼稚園や保育園で集団生活のを送る「園児と先生」の関係にも似たものがあります。

「おまえうまそうだな」は知ってるけど、他のティラノサウルスシリーズは知らない!
という方にも読んでもらいたい絵本。

ティラノサウルスシリーズは物語が繋がっているわけではないので、
どの作品から読んでも大丈夫です。

ちなみに「いちばんあいされてるのはぼく」はシリーズ9冊目の作品。

どれを読んで良いか悩んでいるなら「いちばんあいされてるのはぼく」がオススメ!
なぜなら、私がティラノサウルスシリーズで一番好きな絵本だから。

よたろう

私は3児の父、よたろうです。
子どもに読み聞かせを5年以上続けています。
絵本の感想は毎日ツイッターに残しています!

3人の子どもがいる父親目線で「いちばあいされてるのはぼく」を紹介します。

いちばんあいされてるのはぼく

いちばんあいされてるのはぼく
作/宮西達也
出版社/ポプラ社
長さ/40ページ
発売日/2010年9月2日

あらすじ

ある日、ティラノサウルスは卵を見つけます。

食べようとすると、卵から5匹のアンキロサウルスの子どもが生まれます。

子どもに懐かれてたティラノサウルスはパパになることに。

パパのことが大好きな子どもたち。

ある日、子どもの1匹が

「パパはボクのことがいちばん好きなのさ」と言い出して…。

宮西達也さんの作品

宮西達也さんの絵本といえば
ティラノサウルスシリーズの1作目「おまえうまそうだな」が有名です。

その他にも
「おとうさんはウルトラマン」
「きょうはなんてうんがいいんだろう」
などなど数多くの楽しい絵本を描いています。

もちろん、誰が読んでも良いのですが
「パパ視点」の作品男性の声で読むと迫力のある作品が多く、
お父さんに読み聞かせてもらいたい絵本が多い印象です。

私だけかもしれませんが、文章だけを読むと
「ちょっと説明しすぎでは?」と感じる絵本もあります。
しかし、だからこそ子どもにメッセージがダイレクトに伝わりやすいんです!

そして、色がはっきりしていて子どもからも見やすい絵。
ゴツゴツした絵なのに、ジーンとくる文章とのバランス加減が絶妙!

「甘くなりすぎないお話」が宮西達也さんの魅力です。

登場する恐竜

宮西達也さんが「おまえうまそうだな」に登場する恐竜が象徴するものを書いていました。

ティラノサウルスは
  • たくさんのお金
  • 高価なもの
  • すごい力
アンキロサウルスは
  • やさしさ
  • 思いやり

「ティラノサウルスシリーズ」15周年のメッセージより

「いちばんあいされてるのはぼく」に登場する恐竜も
「おまえうまそうだな」と同じ2種類です。

  • 主人公のティラノサウルス
  • 5匹のアンキロサウルスの子どもたち

恐竜が象徴しているものが「おまえうまそうだな」と同じとは書かれていません。
私は作品ごとに「恐竜が象徴していることは違う」と思います。

「いちばんあいされてるのはぼく」の恐竜は何の象徴なのでしょうか?

独占欲と平等の愛

「いちばんあいされてるのはぼく」の恐竜が象徴しているのは「独占欲と平等の愛」

これは宮西達也さんの発言ではなく、私が勝手に言ってるだけです。
ちょっとお付き合いください。

この絵本の魅力は聞き手で変わる作品の印象です。

子どもは、アンキロサウルスに共感

  • 注目されたい
  • 親や先生を独占したい
  • 自分が一番だと思いたい
  • 自分が目立つためについ意地悪をしてしまう

親は、ティラノサウルスの愛に涙

  • 自分よりも子どもが大切
  • 順番なんて決められない
  • きょうだい仲良くしてほしい

独占欲

パパのことが大好きな子どもたち。
ある日、子どもの1匹が「パパは、僕のことが いちばん好きなのさ」
と言い出したことで物語が動き始めます。

大人を独占したい子どもたち

兄弟がいると知らず知らずのうちに他の兄弟と自分を比べてしまいます。
私にも姉弟がいたので気持ちはよくわかります。

「自分が親から一番に思われたい」
この感情は特殊なことではありません。
兄弟のいる子どもなら共感します。

「親子と兄弟」の関係だけでなく、
「先生と園児や生徒」という関係にも当てはまります。

先生はたった一人。
たくさんいるクラスメイトの中で「自分が先生に一番に思われたい」
先生のことが好きなら自然な感情だと思います。

そんな独占欲を「アンキロサウルスの子どもたち」を通じて描かれています。

平等の愛

子どもたちの「赤い実」の好みを把握しているティラノサウルス。
1匹1匹に合った実を丁寧に配ります。

こういう細かい気づかいに深い愛を感じます。
そこに順番はなくて、ただただ子どもたちを平等に愛しています。

ティラノサウルスの愛のかたち

ティラノサウルスに強さや乱暴なイメージを持つ方も多いと思います。
宮西達也さんの15周年のメッセージでも、ティラノサウルスは

  • たくさんのお金
  • 高価なもの
  • すごい力

の象徴だと語られていました。

そんなティラノサウルスが、
「平等の愛」の象徴というのはなんだかギャップがあって面白いですね。
大きな力を持ったティラノサウルスが「愛の象徴」になっていることで

どんなに力を持っている人でも「人を愛する姿に差はない」

という妙な説得力があります。
人というか恐竜ですが。

キャラクターの二面性

この作品の面白いところが恐竜の二面性です。

  • 乱暴なティラノサウルス
  • 大人しいアンキロサウルス

絵本をこんなイメージで読み始める方は多いと思います。
「おまえうまそうだな」のイメージが影響しているかもしれませんが、
イラストの描き方からもこんな印象を受けます。

しかし、実態は少し違います。

  • 乱暴そうなティラノサウルスが実は優しい
  • 大人しそうなアンキロサウルスが実はダーク

この物語はティラノサウルスが、たまごを食べようとするシーンから始まります。
しかし、気づけばティラノサウルスはアンキロサウルスを深く愛しています。
ここがティラノサウルスの優しくて面白いところですね。

一方、かわいいアンキロサウルスですが、崖から兄弟が落ちてしまうシーンでは、
兄弟を見捨ててその場を離れるという残酷な一面が描かれます。

自分と兄弟を天秤にかけ、自分を選ぶ、子どもの「残酷さ」と「正直さ」

子どもに聞かせるのをためらうような衝撃的なシーンですが、
ある意味、「親の前」と「友達や兄弟の前」で態度が変わる子どもの姿にも似ています。

こんな一筋縄ではいかないキャラクターの奥深さも
「いちばんあいされてるのはぼく」の魅力です。

そして、父になる

この作品で見逃せないのが「ティラノサウルスの心の変化」です。
ティラノサウルスに「パパとしての自覚」が芽生えるシーンが丁寧に描かれています。

ティラノサウルスの涙

物語中盤、傷ついた子どもたちを抱いて眠るシーンでティラノサウルスは涙を流します。

こどもたちを だいて ねむりました。

「はやく げんきに なるんだ」
ティラノサウルスが、そう いったときです。

「パパ…を まもるんだ…」
いっぴきが ねごとを いいました。

しずかな しずかな よるでした。

ティラノサウルスの めから、
キラキラと なみだが こぼれました。

「いちばんあいされてるのはぼく」より

この涙はどういう意味なのでしょうか?

  • アンキロサウルスからの真っ直ぐな愛情に心を打たれて
  • アンキロサウルスを食べようとしてしまったことへの懺悔
  • アンキロサウルスを守らなくてはならないという強い使命感
  • ティラノサウルスの「もう一人じゃないんだ」という安堵感

解釈は色々できますが、ティラノサウルスにとって
「アンキロサウルスが特別な存在になった瞬間」だと考えて間違いなさそうです。

子どもたちを名づけるシーン

「おまえは、ルー。おまえは、シー。
おまえは、アーで、おまえは、テー。
そして、おまえは、イーだよ。

ほらほら、みんな、あーんして。
エヘヘ…てまで かんだら、だめだぞ。
パパ、いたいだろ」

ティラノサウルスは うれしそうに
いってから はっとしました

「いちばんあいされてるのはぼく」より

子どもたちに名前をつけるシーンで、ティラノサウルスは、はっとします。
無意識に自分のことを「パパ」と呼んだことに気付いたからです。

子どもたちからは「パパ」と呼ばれていましたが、
ティラノサウルスが自分のことを「パパ」と呼ぶのはこのシーンが初めてです。

食べるつもりだった「アンキロサウルスのたまご」を
「自分の子ども」として認識していることに気付いた瞬間です。

しかし、ティラノサウルスは
アンキロサウルスをいきなり自分の子どもと認めたわけではありません。

絵本をよく読むと、
ティラノサウルスにとってアンキロサウルスの存在が徐々に大きくなっていることがわかります。

アンキロサウルスの呼び方の変化

ティラノサウルスとアンキロサウルスの関係性に応じて
「アンキロサウルスの呼び方」が絵本内で変化しています。

  1. たまご
  2. アンキロサウルスのあかちゃん
  3. アンキロサウルスのこたち
  4. こどもたち
  5. ルー、シー、アー、テー、イー

徐々にティラノサウルスとの距離が縮まっているのがわかります。
これは、ティラノサウルスとアンキロサウルスの関係性を表していると考えてよさそうです。

実は「アンキロサウルス」という単語は物語前半にしか出てこないんです。

「アンキロサウルスの子」じゃなくて
「ティラノサウルスの子ども」になったからだと考えるとスッキリしますね。

美しい伏線回収

「いちばんあいされてるのはぼく」の魅力はなんと言っても物語自体の面白さ。
宮西達也さんの絵本の魅力を存分に味わえる作品です。

こんな一筋縄ではいかないキャラクターたちが暮らす世界に張り巡らされた伏線の数々。

  • 作品タイトルの本当の意味
  • アンキロサウルスの名前の意味
  • 赤い実の秘密

「ラスト〇〇分でどんでん返しが!?」
映画のキャッチコピーみたいですが、
この絵本もラスト数ページで伏線をキレイに回収します。

ぜひ、絵本を最後まで読んで確かめてみてください!

会話の大切さ

この絵本を読んでジーンときたのですが、よくよく考えると

よたろう

ティラノサウルス、コミュニケーション不足じゃね?

1匹の子どもが
「いちばんあいされてるのはぼく」と勘違いしたところから物語が動き始めます。

ティラノサウルスの愛が深いことは絵本を読めば十分にわかりますが、
子どもたちにはイマイチ伝わっていませんでした。

これは、ティラノサウルスの「会話によるコミュニケーション不足」が原因だと思います。

  • 赤い実を配る順番
  • 顔を舐める理由

ちょっと説明してくれれば、子どもたちは安心できたはず!

気持ちを言葉にする

「男は、言葉少なく背中で語る」

こう言うとかっこいいかもしれませんが、伝わらないものは伝わりません。

ティラノサウルスの怠慢です。

しかし、絵本を読んでいて私もハッとしました。
子どもに伝わると思っていても意外と伝わっていない

  • 言わなくても伝わるだろう
  • 言葉の行間を読んでくれ

こんな考えのときって誰にでもありますよね。

ティラノサウルスと同じやんけ。

子どもと親の関係だけではありません。
夫婦間や、ともだち。
色々な場面で「会話って大切だなー」と考えさせられました。

今のところ、我が家は会話が少ない方ではありません。
でも、これから先のことはわかりません。
反抗期もあるし。

気持ちを言葉で伝える、伝え合う

改めて大切なことに気づかせてくれた絵本「いちばんあいされてるのはぼく」
素敵な絵本です。
ぜひ、読んでみてください!

今から家族へ言葉で愛を伝えてきます!

よたろう